近年、香害(こうがい)やフレグランスフリーという言葉を見聞きする機会が増えています。海外では、病院や大学、行政機関などでフレグランスフリー・ポリシー(香り配慮方針)を導入する事例が広がり、香料を含む製品への曝露によって体調に影響を感じる人々への配慮が進められています。日本でも、オフィスや商業施設、公共空間など、多くの人が時間を共有する室内環境において、香りやにおいへの配慮が関心を集めるようになってきました。
こうした流れは、ともすると「香りを排除すべき」という方向で受け止められがちです。しかし、心地よい香りは空間に快適さや個性をもたらす価値でもあります。空間づくりで本質的に重要なのは、「その空間のにおいが、多様な感覚を持つ人々にどう受け止められているのかを把握し、適切に管理すること」にあると言えるでしょう。
香りの感じ方は、人によって異なる
香りが強い、あるいは不快に感じる、といった評価は主観的になりやすく、人によって認識に差が生じます。同じ空間でも、ある人には心地よい香りが、別の人には強すぎると感じられることがあります。多くの人が共有する室内空間では、この差がより大きな課題となります。だからこそ、空間を管理する側が「その場のにおいが客観的にどのような状態にあるのか」を把握しておくことが、配慮ある環境づくりの出発点になります。
「気になるにおい」の原因は、ひとつではない
室内で感じられるにおいの原因は、芳香製品だけではありません。建材や什器、清掃用品などから揮発する VOC(揮発性有機化合物)、生活由来のアンモニアや硫化水素、微小な粒子など、複数の要因が複雑に絡み合っています。人の嗅覚だけでは、「どこから」「どのようなにおいが」「どの程度」発生しているのかを正確に切り分けることは容易ではありません。
室内環境を「データ」として可視化する
このような背景から、これからの空間管理で重要になるのは、においや空気環境を客観的なデータとして継続的に把握することです。室内環境IoTセンサー POD2 は、室内の空気質をリアルタイムかつ24時間連続でモニタリングし、においを含むさまざまな環境要素を可視化します。具体的には、次のような測定が可能です。
- ガス・VOC(揮発性有機化合物)濃度の常時測定
- においの強度・種類の測定と発生源の特定(MOSセンサーと多変量解析アルゴリズム)
- 微小粒子(PM0.3〜PM10)の測定・識別
- 温度・湿度・気圧・光・騒音・振動など、快適性に関わる指標の同時モニタリング
これにより、「なんとなく気になる」という感覚的な段階にとどまっていた「においの問題」を、いつ・どこで・どの程度発生しているのかというデータとして捉え、対策を検討できるようになります。
客観データと、人の感覚を組み合わせて
センサーによる測定データだけでなく、その空間を利用する人々の体感や評価といった主観的な情報も重要です。POD2なら、QRコードを活用して主観的な情報もあわせて収集できます。両者を組み合わせることで、「測定値としての環境」と「人が実際にどう感じているか」を結びつけて理解できるようになります。さらに、専用プラットフォーム EllonaSoft では、しきい値を超えた際のリアルタイム通知や、換気などの対策との自動連携も可能です。
室内環境のモニタリングは、空間の「においを見える化」し、配慮ある運用を支えるための仕組みです。私たちアナリティクセンスは、オフィス・商業施設・公共空間などの環境マネジメントを、客観的なデータの可視化を通じて支援してまいります。