CCUSプラントにおけるアミン排出・劣化生成物のリアルタイム監視

2050年カーボンニュートラルに向けて、発電、鉄鋼、セメント、化学、製油所など、CO2排出量の多い産業ではCCUSの導入が重要な選択肢になっています。日本でも、2024年5月に「二酸化炭素の貯留事業に関する法律」が成立し、2030年までのCCS事業開始を目指す先進的CCS事業が進められています。経済産業省とJOGMECは、2030年までに年間600〜1,200万トンのCO2貯留量確保に目途を付けることを目標としています。

CCUSでは、CO2をどれだけ回収できるかに注目が集まりがちです。もちろん回収率やエネルギー効率は重要ですが、実際のプラント運転では、回収プロセスから発生する微量成分をどう管理するかも大きなテーマになります。

CO2回収後にも残る「見えにくい排出」

CO2回収技術の中でも、アミン吸収液を使う化学吸収法は、発電所や各種産業プロセスで広く検討されている方法です。排ガス中のCO2をアミン溶液に吸収させ、加熱再生によってCO2を分離し、アミン溶液を再利用する仕組みです。

一方で、アミン溶液は運転中に熱、酸素、NOx、SOxなどの影響を受け、少しずつ劣化することがあります。その過程で、アンモニア、アルデヒド類、低分子アミン類、有機酸などが発生する可能性があります。また、アミン由来成分は環境排出や腐食、溶媒性能の低下、メンテナンス負荷にも関係するため、商用化を考えるうえで避けて通れない課題です。

特に注意したいのは、こうした成分の多くが微量であり、しかも運転条件によって変動することです。負荷変動、吸収液の状態、再生温度、水洗条件、ミスト発生などによって、排出の出方が変わる可能性があります。つまり、定期的なサンプリングだけでは、短時間の変化や原因の切り分けが難しくなる場面があります。

排出成分を時間軸で見る

CCUSプラントを安定して運転するには、アミンや劣化生成物を「後から確認する」だけでなく、運転条件とあわせてリアルタイムに見ることが重要になります。

たとえば、吸収塔出口、水洗塔後段、再生器周辺、排気ラインなどで微量成分の変化を追うことができれば、どの条件でアミン排出が増えやすいのか、どのタイミングで劣化生成物が出ているのかを把握しやすくなります。 このようなデータは、単なる排出監視だけではなく、次のような判断にもつながります。

  • 洗浄条件やミスト対策の効果確認
  • 吸収液の劣化傾向の把握
  • 運転条件変更時の影響確認
  • 異常発生時の原因調査
  • 環境管理データとしての蓄積

CCUSの実証から商用化へ進むほど、こうした「運転しながら測る」という考え方の重要性は高まっていくと考えられます。

現場で測ることの意味

アミン排出や劣化生成物の分析では、ラボでの詳細分析が重要な役割を持ちます。一方で、プラントの運転状態は常に変化しているため、現場で連続的に測れる手段があると、より実践的なデータが得られます。

V&Fのオンライン質量分析技術は、このような用途に有用な選択肢です。

海外では、ノルウェーのTechnology Centre Mongstad(TCM)において、1,200時間にわたるアミン系CO2回収試験キャンペーンでAirSenseがオンライン排出測定に使われました。

微量成分をリアルタイムに把握できれば、実証試験での条件検討や、将来の商用プラントでの安定運転に役立つ判断材料になります。

CCUSは環境性能まで含めた最適化へ

CCUSの社会実装が進むと、評価軸はCO2回収率だけにとどまりません。エネルギー消費、溶媒寿命、腐食、保全性、排出管理、地域環境への影響まで含めて、総合的にプロセスを最適化することが求められます。

特にアミン吸収法では、溶媒を長期間安定して使いながら、アミン排出や劣化生成物をできるだけ抑えることが重要です。そのためには、プラント内で何が起きているのかを、できるだけ早く、連続的に把握する必要があります。

リアルタイムな微量ガス分析は、CCUSを「実証する技術」から「安定運用する技術」へ進めるうえで、重要な支援技術になると考えられます。CO2を回収するだけでなく、そのプロセスを安全に、環境負荷を抑えて運転することが、今後のCCUS普及を支えるポイントになりそうです。